大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

浦和家庭裁判所熊谷支部 昭和33年(家)944号 審判

申立人 小島文枝(仮名)

相手方 横山保(仮名) 外一名

被相続人 横山たま(仮名)

主文

本籍埼玉県大里郡寄居町大字○○八一三番地の一亡横山たまの遺産を次のとおり分割する。

(一)  埼玉県大里郡寄居町大字○○字△△△○○○番の○・宅地三四坪及び同所七二六番・畑四畝二五歩は申立人と相手方横山保の共有とする。

(二)  埼玉県大里郡寄居町大字○○字本町○○○番・宅地四畝二一歩(実面積一四八坪二合四勺)はこれを別紙図面のように、五〇坪八合四勺七厘(別紙図面(A)部分)と九七坪三合九勺三厘(図面(B)部分)に分割し、前者を相手方横山守の所有とし、後者を申立人と相手方横山保の共有とする。

理由

当裁判所が本件記録に顕われた一切の資料に基き認定した事実及び遺産分割の実情は次のとおりである。

一、被相続人横山たまは昭和一八年五月二六日本籍地である埼玉県大里郡寄居町大字△△○○○番地の○において死亡したので旧法(以下旧法というのは昭和二二年法律第二二二号による改正前の民法をいい、新法とは右改正後の民法をいう)に基く遺産相続が開始し、相手方守は被相続人と亡横山誠の二男、相手方保は五男、申立人は二女で右三名が本件相続開始当時の遺産相続人である。

二、本件相続開始当時別紙目録記載の不動産(以下単に本件遺産という)が被相続人の遺産であつたことは申立人及び相手方保において認めるところであり、相手方守も強いて争わないところであるからこれを前提として分割を進めることとする(他に積極消極の遺産があることは認められない)。ところで、本件遺産のうち、(四)(五)(九)の各土地は共同相続人たる本件当事者三名の合意により処分されたことは争いがないから、この三筆の土地は本件分割から除外する。なお(六)(七)(八)の土地については、相手方守が(六)(八)の土地を、申立人及び相手方保不知の間に、共有物分割を原因として自己名義に共有物分割の登記をしたため、不安を感じた申立人と相手方保が、(七)の土地を、相手方守に無断で共有物分割を原因として申立人と相手方保の両名名義に共有物分割登記をしたことから、相手方守が申立人を告訴するという事態に立ち至り、担当検察官の斡旋によりこれらの土地については、それぞれ登記がなされたとおり、即ち、(六)(八)土地は相手方守取得、(七)の土地は申立人と相手方、両名の取得とすることに合意が成立したことが認められるから、右三筆の土地については当事者間に分割の協議が調つたものとして分割をしない。

三、本件遺産の分割については、申立人から共有財産分割調停の申立がなされたが(当庁昭和三三年家(イ)第三号)、昭和三三年二月一三日調停不調に終つたため、本件審判手続に移行するに至つたものであるが、分割の審判についての争訟は申立人、相手方保と相手方守間に存するものであるから、右の関係で分割をすれば事足りると認められる。そして、本件遺産分割の対象となるべき本件遺産のうち(一)ないし(三)、(六)ないし(八)の各土地の評価は別紙目録記載のとおりで、その合計は金二、四四三、〇〇〇円である。ところで本件は旧法に基く遺産相続であるから旧法によることとなるが、新法附則第三二条により、分割の基準は新法第九〇六条が準用されることになるので、本件に顕われた当事者並びに遺産の現状その他一切の事情を考慮して分割の方法を考えるに(相続人中に被相続人から遺贈又は生前贈与を受けたというような特に考慮すべき事項はない)、相続人等の相続分は旧法第一〇〇四条により相等しきものとされており各三分の一であるから各人の取得分はそれぞれ金八一四、〇〇〇円余となり、このうち、前記のように、本件遺産のうち相手方守は既に(六)(八)の各土地合計金五〇〇、〇〇〇円相当を取得し、申立人と相手方保は(七)の土地金四二八、〇〇〇円相当を共同取得しているからこれらを控除すると、相手方守の取得分は金三一四、〇〇〇円となり、申立人と相手方保の取得分は各金六〇〇、〇〇〇円となるから右相続分に基き残る遺産(一)(二)(三)の分割を考える。(三)の土地上には相手方守が家督相続により取得した家屋二棟(うち一棟は他人に売却した)が存するから、相手方守の取得とすることも考えられるが、それでは(一)(二)の土地を申立人と相手方保の共同取得分としても、相手方守の取得分が超過することなので(この超過分につき取得者守をして金銭により補償せしめることも相当とは認められない)、この(三)の土地を相手方守居住の家屋の敷地部分五〇坪八合四勺七厘(右土地の西北角(a)点から南境界線上六・二二間の地点を(b)点とし同点から境界線に垂直の方向六・二間の地点を(C)点とし、右土地の東南の角(d)点から境界線上南西方四・九〇間の地点を(e)点とし、右(b)点(C)点(e)点を結んだ線より南西部分である(A)部分)とその余の部分九七坪三合九勺三厘(別紙図面(B)部分)に分割し、前者を相手方守の取得とし、後者並びに(一)(二)の各土地を申立人と相手方保の共同取得分とすると、大略前示各人の取得分に相応する割合となるのでこのように分割するのが相当と認める。

四、申立人と相手方保は、前記共同相続人全員の合意により処分した(四)(五)(九)の土地代金中相手方守からなお取得分があるというが、相手方守審尋の結果によると、これらの物件は、その余の本件遺産も含めすべて相手方守において管理に任じ、公租公課も負担してきたものであること、右売却代金は被相続人夫婦の負債に充当したものであることが窺えるので、これらの点を考慮し、なお申立人等が要求する金員も特別多額であるともいえないから、相手方守において右売却代金を申立人等に交付しないことを考慮しないで分割しても、格別申立人なり相手方保に対し不利益な分割ということもできないから、本件分割につきこれらの点は考慮しなかつた。

(家事審判官 小池二八)

別紙

目録

(一) 埼玉県大里郡寄居町大字○○字△△△○○○番の○

一、宅地 三四坪(時価一七〇、〇〇〇円)

(二) 同所○○○番

一、畑 四畝二五歩(時価四三五、〇〇〇円)

(三) 同県同郡同町大字△△△町○○○番

一、宅地 四畝二一歩(実面積一四八坪二合四勺)

(時価九一〇、〇〇〇円)

(四)同県同郡同町大字○字△△△○○○番の○

一、宅地 二三一坪(時価九二〇、〇〇〇円)

(五) 同所○○○番の○

一、宅地 一一七坪(時価五八五、〇〇〇円)

(六) 同所○○○番の○

一、宅地 九五坪(時価三八〇、〇〇〇円)

(七) 同所○○○番の○

一、一〇七坪三勺(時価四二八、〇〇〇円)

(八) 同所○○○番の○

一、宅地 二九坪九合七勺(時価一二〇、〇〇〇円)

(九) 同所○○○番

一、宅地 五四一坪時価二、一六〇、〇〇〇円

図面〈省略〉

大里郡寄居町大字寄居

字本町 ○○○ 番宅地 S1/200

斜線部分は家屋所在部分を示す

赤斜線部分は家屋所在部分を示す

(A) 2.6×1.45 = 3.77   15.25×(8.0+433)÷2 = 94.016

8.35×1.95 = 17.257  13.9×6.66÷2 = 46.287

9.38×5.65 = 52.997  7.0×1.73÷2 = 6.055

9.38×2.95 = 27.671  2.6×1.45÷2 = 1.885

101.695        148.243

50.847坪        148坪2合4勺

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例